創作の基本は妄想
音楽に導かれ
父母の若き日を思う
- TEXT / 漫画家・萩尾望都
- 撮影協力 / FILFIL CACAO FACTORY
私、チョコレートには目がないんです。仕事をちょっと一休みする時に、お茶と一緒にいただきます。旅行のお供もチョコです。
今回いただいたチョコは、加賀棒茶のミルクチョコに白山市のソバの実が散らしてあるとのこと。ソバの実って白いんですね。九谷の柄の包装はデザインも色もきれいで、次に旅に出る時には持っていきたいです。
金沢には20代のはじめに坂田ちゃん(漫画家の坂田靖子さん)のお宅を訪ねて以来、何度もお伺いしています。駅を降りると能楽の像があったり、「お三味線教えます」という看板があったりして、文化的なまちの雰囲気を肌で感じました。金箔や輪島塗、九谷焼もあり、ゴージャスな印象があります。
卯辰山にあった水族館では不思議な出合いもありました。小さな生き物が砂の中から何匹もぐーっと出たり入ったりするのが面白くて。ずっと見ていました。あれはチンアナゴかしら。坂田ちゃんの家で図鑑も見ました。
坂田ちゃんや花郁悠紀子さん(金沢出身の漫画家、1980年死去)にアシスタントをしていただいたのは青春の一時期です。金沢とのつながりを感じています。
3月10日の石川県立音楽堂の公演では、私の作品を青島広志先生が音楽にして演奏してくださいました。どれも面白いですが、特に「月夜のバイオリン」は若い女性と父の若い頃のフレーズがデュエットしているようで、この旋律を聞くと父と母にも若い頃があったのかと、はっと気付くんです。音楽ってすごいですね。漫画という文化の周辺に青島先生のような方がいて、音楽の方に導いてくださると、広がりがあって大変ありがたいです。
私の創作の基本は妄想、想像力、好奇心。いろいろと想像したり、考えたりしていると退屈しないんです。再開した「ポーの一族」の連載はまだほんのちょっとエピソードがあるので、もう少し書かせていただきますね。
少女漫画の神様に迫る!~少女漫画音楽史 in 金沢~
原作:萩尾望都 作曲:青島広志による「柳の木」「月夜のヴァイオリン」 他
一律 : 1,000円

PROFILE
萩尾 望都(はぎお もと)
949年5月12日生まれ。福岡県大牟田市出身。1969年「ルルとミミ」でデビュー。代表作「ポーの一族」「トーマの心臓」「11人いる!」「なのはな」等
1976年「ポーの一族」「11人いる!」で第21回小学館漫画賞、1997年「残酷な神が支配する」で第1回手塚治虫文化賞マンガ優秀賞、2006年「バルバラ異界」で第27回日本SF大賞、2011年日本漫画家協会賞・文部科学大臣賞、ほか受賞多数。
2012年には少女漫画家として初の紫綬褒章を受章。2017年朝日賞を受賞。2019年文化功労者に選出。2022年旭日中綬章を受章。2022年アイズナー賞でコミックの殿堂(The Comic Industry’s Hall of Fame)入り。2024年アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を受賞、日本芸術院会員となる。2016年に40年ぶりの「ポーの一族」新作発表以来、現在も月刊flowers誌にて「ポーの一族」を連載中。
SHOP INFO
FILFIL CACAO FACTORY by FIL D'OR
石川県金沢市木ノ新保町1-1 金沢百番街「あんと」内
TEL:080-7898-6927
〈営業時間〉8:30~20:00
〈定休日〉不定休