2020年代音楽シーンの新旗手・Yaffleが提案する「新たな音楽の楽しみ方」
- TEXT / 八木宏之(音楽評論家)
- PHOTO / Yaffle ©ROB Walbers, 八木宏之 ©István Kohán
作曲家、音楽プロデューサーとして、ポップミュージックから映画音楽まで幅広い領域で活躍するYaffleが、 石川県立音楽堂の名物企画「音楽堂カルチャーナビ」に初登場する。ポップミュージックとクラシック音楽が、 20世紀にどのように発展し、交錯し、影響を与え合ったのか。その変遷を現代の音楽シーンの最前線に立つYaffleの視点で読み解いていく。このイベントは対談形式で行われ、聞き手はこの記事の筆者である八木宏之が務める。筆者はクラシック音楽のWebメディア『FREUDE』を主宰する音楽評論家で、高校生の頃からYaffleの創作活動を間近で見てきた。
これまでクラシック音楽とポップミュージックは個別のジャンルとして受容され、相互の影響が注目されることはあまりなかった。とりわけ日本では、クラシック音楽のファンはクラシック音楽のみを、ポップミュージックのファンはポップミュージックのみを楽しむケースが多いだろう。しかし音楽史に目を向けると、ラヴェルがジャズの エッセンスを自作に取り入れていたり、ガーシュウィンはジャズとクラシックの融合を目指していたり、この半世紀を振り返ってみても、プログレッシブ・ロックやミニマ ル・ミュージック、ポストロックにポストクラシカルなど、ク ラシック音楽とポップミュージックの両面から語られる べき潮流は数多い。そうした歴史を改めて紐解いてみることで、ジャンルにとらわれない音楽の楽しみ方を提案することがこの対談の狙いである。
2023年にリリースされたYaffleのアルバム『After the chaos』では、彼がこれまでに吸収してきたレディオヘッドやシガー・ロス、エルガー、ヴォーン・ウィリアムズらの作品が、彼自身の美意識を通して、新たな音楽語法を形作っている。Yaffleの音楽はクラシック音楽やポップミュージック、ジャズなどのジャンル分けが、今日においては意味をなさなくなっていることを私たちに教えてくれているのだ。対談のあとには石川県を拠点に活躍するヴァイオリニストの竹田樹莉果をゲストに迎え、Yaffleの作品の実演もお楽しみいただく予定だ。竹田はYaffleのレコーディングに数多く参加し、作曲家の音楽づくりを直に体験してきた演奏家である。Yaffleのピアノと竹田のヴァイオリンが織りなす2020年代の香りをどうかじっくりと味わって欲しい。
ポップミュージック×クラシック現代音楽
◯Yaffle(音楽プロデューサー)
◯八木宏之(音楽評論家)
◯竹田樹莉果(ヴァイオリニスト)
Yaffle氏、八木氏による対談
(Yaffle氏、竹田氏による演奏1曲程度あり)
1,000円

PROFILE
Yaffle
アーティスト、音楽プロデューサー、作曲家。藤井風やiri、米津玄師、SIRUP、小袋成彬、eill、adieu、ao、SEKAINO OWARI、AIなど数多くのアーティストの楽曲プロデュースやアレンジを手がける。ポケモン 25周年を記念したコンピレーション・アルバムには唯一の日本人アーティストとして参加。自身の最新作『After The Chaos』はクラシックの名門レーベル、ドイツ・グラモフォンからリリース。映画音楽の担当作品に、『ナラタージュ』、『響ーHIBIKI-』、『キャラクターム『変な家』、『ブルーピリオド』など。サウンドトラックを手がけた『映画えんとつ町のプペル』ではアニメーション界のアカデミー賞と呼ばれる第49回アニー賞で最優秀音楽賞にノミネート。

PROFILE
八木宏之
青山学院大学文学部史学科芸術史コース卒。愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士前期課程(修士:音楽学)およびソルボンヌ大学音楽専門職修士課程(Master2 Professionnel Mediation de la Musique) 修了。2021年4月にWebメディア『FREUDE』を立ち上げ。クラシック音楽を中心にプログラムノートやライナーノーツ、レビュー、エッセイを多数執筆するほか、コンサートのプレトークなども積極的に行なっている。