第486回定期公演フィルハーモニー・シリーズ
- TEXT / 戸部亮(音楽評論家)
「面白い!」「楽しい!」
佐藤俊介が弾き振りする公演を体験したことがある人は、とにかく「面白い」「楽しい」という感情をまずかきたてられる。
東京の話で恐縮だが、2023年3月に佐藤は東京交響楽団に客演した。佐藤が弾き振りをしたのだが、聴いていてまさにこのような感情を湧きたてられ、とても楽しいものだった。客席に伝わった「楽しさ」は佐藤がオーケストラ・メンバーに積極的にコンタクトしていき、一緒に作品の表現を掘り起こし、その場の雰囲気も大切に作り上げていったところにある。このライヴ感、活き活きさが佐藤が弾き振りする公演の面白さ、楽しさに直結する。思えば作品を活き活きと再構築していく佐藤の姿は音楽監督に就いていたオランダ・バッハ協会管弦楽団でのバッハの弾き振りでも同じであった(多くの動画がインターネットにアップロードされているので確認してほしい)。
モーツァルトに影響を与えた作曲家、ヴァンハル「交響曲 ニ短調 Bryan d1」とミスリヴィチェク「ヴァイオリン協奏曲」の作品で前半を組み、後半にモーツァルト「交響曲第38番《プラハ》」でプログラムを構成。チェコに生まれたヴァンハルとミスリヴィチェク、《プラハ交響曲》でモーツァルトへの道を構成するプログラムは佐藤の考えつくされたプログラミングセンスも表明するかのようだ。
プログラミングの美しさと湧きたてられる「面白い!」「楽しい!」という感情、これらが佐藤という才人とオーケストラ・アンサンブル金沢の腕前で何倍にも増幅されよう。
○リーダー・ヴァイオリン:佐藤俊介
ヴァンハル/交響曲 Bryan d1
ミスリヴィチェク/ヴァイオリン協奏曲 ホ長調
モーツァルト/交響曲 第38番 「プラハ」
A席 ¥4,000/ビスタ席 ¥3,000
スターライト席 ¥1,000/車椅子席 ¥5,000