ファンタスティック・オーケストラコンサート Vol.1
- TEXT / 戸部亮(音楽評論家)
クラシック音楽を中心に聴く人たちに多くなりがちな話。彼らは本質や本物を志向することについて好奇心旺盛であくなき探究心を持つ。それが極度に進むと、結果マニア化していく。そうなると彼らはジャンルの線引きをしっかりと定めて、領域を明確にしようとしがちになる。
しかしそれは生活を豊かにする糧である音楽や文化を楽しむ姿勢としては惜しい。本来、ジャンルを問わず各々の心に残る、響いた音楽はいい音楽だ。また楽しみ方も彩りがあったほうがいいし、同じ曲や素材であっても多方面からの楽しみ方を知ったほうが心田は耕される。
ただそのような時は楽しみ方をガイドする人が必要だ。楽しみ方を見せ、魅せる仕掛けで楽しみ方を導いてくれる人でありコンテンツ。そこで思いつくのは宮川彬良(アキラさん)が出演して2003~2012年度にNHK教育・Eテレで放送されていた「クインテット」。名番組だった。アキラさんと人形の音楽とトークの掛け合いで、クラシック音楽のみならずジャンルを超えて音楽を魅せ、楽しさを伝播させてくれた。
いいアンサンブルはポップスを演奏する場合もノリよく、見事だ。アキラさんが指揮に、ピアノに、加えてトークも加えて自在に操る名曲たち。そこにオーケストラ・アンサンブル金沢の軽妙洒脱な掛け合いが溶け込む。
公演前から楽しいひと時が約束された公演である。
○指揮・ピアノ・お話:宮川彬良
モーツァルト(宮川彬良編)/アイネ・クライネ・"タンゴ"ムジーク
ショパン(宮川彬良編)/英雄ポロネーズ
プラード(宮川彬良編)/シンフォニック・マンボ No.5
モリコーネ(宮川彬良編)/ニュー・シネマ・パラダイス
宮川彬良/マツケンサンバ Ⅱ ほか