第484回定期公演 フィルハーモニー・シリーズ
異才の王道直球勝負
- TEXT / 渡辺和(音楽ジャーナリスト)
若きベートーヴェンは、まずなによりも名ピアニストだった。学園都市ボンからヴィーンに上京し、瞬く間に帝都の音楽好き貴族らのアイドルとなった気難しい若者の得意技は、その場で音楽を創り出す即興演奏だったという。
天才ピアニストとして世に出たアンカラ生まれのサイだが、トルコ出身のクラシック系としては世界で最も人気の作家かも。今年の日本でもオーケストラが定期で交響曲や協奏曲を取り上げたり、人気ソリストがアンコールで難技巧小品を披露したり、ピアノの才とは無縁に作品が披露されているのである。
そんな鬼才が演奏家として最も得意とする協奏曲こそ、ベートーヴェンの第3協奏曲である。作曲者の独奏で初演されたときピアノパートはほぼ真っ白なままだった、と伝わるこの作品こそ、作曲家兼名人としてのサイを示す最良の楽譜かも。なにしろサイがこの曲の第1楽章のために作曲したカデンツァが、大手出版社から出版されている程なのだ。
異才との共演を前にマエストロ広上が披露するのは、ベートーヴェンが生涯唯一書いたバレエ音楽への序曲。そして異才のぶつかり合いは、楽聖が敢えて古典のフォーマットを踏襲せんときっちり正装した交響曲で括られる。
9/17
[火]
19:00開演開演(18:00開場)
コンサートホール
第484回定期公演 フィルハーモニー・シリーズ
指揮:広上淳一(OEKアーティスティック・リーダー)
ピアノ:ファジル・サイ
ベートーヴェン/「プロメテウスの創造物」序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調
ベートーヴェン/交響曲 第4番 変ロ長調
【全席指定】 SS席 ¥7,000/S席 ¥6,000/A席 ¥5,000/V席 ¥3,000/スターライト席 ¥1,500