第485回定期公演 マイスター・シリーズ
トランペットが輝かしく響く午後
- TEXT / 渡辺和(音楽ジャーナリスト)
19世紀フランス最大の古典主義者とされるサン=サーンスは、文学を音にするロマン派趣味の交響詩もいくつか手掛けている。墓場での死者の舞踏をホラー映画のように描くものの、音が外れた独奏ヴァイオリンの乱舞や骨がぶつかるシロフォンの響きなど、深刻さよりも真顔でギャグを飛ばす皮肉屋の顔の方が顕わかも。
今や巨匠の風格も漂うナカリアコフが吹き上げるアルメニア人アルチュニアンの協奏曲も、若くして第二次大戦で戦死した旧友のトランペット名手へのオマージュとされる。だが、死や戦争の災禍への嘆きではなく、あくまでも楽器の可能性を教えてくれた友への讃歌。冒頭の勇壮な雄叫びから、騎馬民族天を翔るテーマ、そして中央アジアを連想させるエピソードでは昭和ムード歌謡風の泣き節も。底抜けの明るさとアンニュイな陰鬱、両極端を共存させるトランペットの多彩さをご堪能あれ。
若きマエストロ川瀬が日曜の午後のメインに用意したのは、常に暗さへと傾斜しかねない後半生のブラームスが、美しい自然に触発され珍しくも明るく振る舞ったニ長調の響き。生真面目で孤独な魂が息の長い旋律美の先に到達する輝きは、秋の夕日のようにしっとりと味わい深い。
9/22
[日]
14:00開演開演(13:00開場)
コンサートホール
第485回定期公演 マイスター・シリーズ
指揮:川瀬賢太郎(OEKパーマネント・コンダクター)
トランペット:セルゲイ・ナカリャコフ
サン=サーンス/交響曲「死の舞踏」
アルチュニアン/トランペット協奏曲
ブラームス/交響曲 第2番 ニ長調
【全席指定】 SS席 ¥7,000/S席 ¥6,000/A席 ¥5,000/V席 ¥3,000/スターライト席 ¥1,500