ファンタスティック・オーケストラコンサート Vol.4
- TEXT / 寺西肇(音楽ジャーナリスト)
NHKの大河ドラマのテーマ音楽とは、過去の物語に付されたものでありながら、実は“現在を映す鏡”でもあるのかもしれない。1年間のドラマの冒頭を飾る音楽。冒頭のわずか3分ほどで、ストーリー全体のイメージを指し示すに留まらず、毎週繰り返し、耳にしてなお、聴き飽きることのない清新さを求められる。
そんな難題に、どれほどの気鋭の作曲家たちが果敢に挑み、見事に応えてきたことか。今回のファンタスティック・オーケストラコンサートは、60曲以上の“労作”の中から、大河ドラマをこよなく愛するOEKアーティスティック・リーダーの広上淳一が、林光による「国盗り物語」(1973年)から、冬野ユミの「光る君へ」(2024年)まで、9作を厳選。広上のタクトとOEKの生演奏で、純粋な芸術作品として、味わってもらおうという趣向だ。
そして、取り上げられる楽曲のうち、「黄金の日日」(1978年)と「独眼竜政宗」(1987年)を手掛けた池辺晋一郎、「利家とまつ」(2002年)の渡辺俊幸という2人の作曲家も登場。「利家とまつ」で家臣の前田長種役を演じた俳優の辰巳琢郎を交えて、作曲と演じ手という双方の立場から、大河ドラマのテーマ音楽の魅力について掘り下げる。
実は、加賀百万石の祖の姿を生き生きと描いた「利家とまつ」では、ゆかりの地のオーケストラとして、OEKが本放送でのテーマ音楽や劇伴の演奏にも参加。大河ドラマの音楽へのNHK交響楽団以外の起用は非常に珍しく、話題となった。今回は、メインテーマだけでなく、辰巳の娘でソプラノ歌手の真理恵をフィーチャーしての「永遠の愛 アリアバージョン」など、劇伴を含めた組曲の形で、たっぷりと楽しめる。
懐かしいものから、まだ強く耳に刻まれているものまで。幾多の名演を生んできた広上とOEKのコンビが創出する、音によるスペクタクル。あなたの記憶を呼び覚まし、映し出す“鏡”ともなるかもしれない。
ファンタスティック・オーケストラコンサート
大河ドラマ大好き人間、淳一こだわりのテーマ集!
〇指揮:広上淳一(OEKアーティスティック・リーダー)
演奏曲目
NHK 大河ドラマテーマ曲集 広上セレクション
渡辺俊幸/「利家とまつ」 ほか
25歳以下公演前日より半額で予約可