石川県立音楽堂
オーケストラアンサンブル金沢

2026-2027《継承》ホールに響く、音の幸②

オーケストラ・アンサンブル金沢 2026-2027 シーズンラインナップ

音楽堂が開館したとき、岩城宏之初代音楽監督は「オーケストラが真の本拠地を持つことは、日本の音楽史上初めてのこと(中略)同じコンサートホールでリハーサルと本番を行うことができる最高の環境の中で、我々は〝OEKサウンド〞をここ金沢から世界に向けて発信します」というメッセージを寄せた。25年の時が経ち、井上道義、マルク・ミンコフスキ、広上淳一と歴代のシェフが時代をつないだ間にどのような音が創られたかーここで一度紐解いてみよう。

  • TEXT / 東条碩夫(音楽評論家)

音楽堂で創られた「OEKサウンド」とは


 「あの石川県立音楽堂で聴くOEKには独特の良さがあるよ」という噂は、かなり早い時期から東京にも広まっていた。ただ、北陸新幹線もまだ開通していなかった当時は、そう簡単に金沢へ参上するわけにも行かなかったのである。それに加え、フットワークのいいOEKのほうがしばしば東京に来ていたので、私どもは金沢まで行かなくても、のべつOEKを聴くことができる、という具合だった。井上道義さんが、「今や金沢の名物は兼六園だけではないぞ」という珍妙なトークで「OEKと石川県立音楽堂」を東京の聴衆にPRしていたのは、2008年3月のOEKサントリーホール公演の時である。


 この噂に高い石川県立音楽堂を、私が初めて訪れ、その音響の中でOEKを聴いたのは、2011年5月のことだった。井上道義さんの指揮でシューベルトの第5交響曲その他を聴いたのだが、ホールの残響が豊かで、響きに奥行と深みがあり、しかもオケの音が細部まで実に明晰に聞こえるのに驚いたものだ。OEKの音が、東京のいろいろなホールで聴くよりもずっと香気に満ちていて、最強音をも柔らかくバランスよく調和させてしまう。このホールで聴くOEKはいいよ、という話は本当だと思った。


 その4年後、2015年6月22日に同じ井上さんの指揮でブラームスの第2交響曲などを聴いた時も同様であった。このドイツ・ロマン派の交響曲がたっぷりと響き、オーケストラが小編成であることを意識させぬほど、豊かな拡がりを持っていたのである。OEKの音がこのホールのアコースティック(音響)を基盤として創られていることが本当に納得できたのはこの時だった。遠路はるばる聴きに来た甲斐があった、と私は心から満足したのである。


 それ以降、何度このホールまでOEKを聴きに来たことか。たとえば、マルク・ミンコフスキが指揮したドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」の夢幻的な演奏や、ベートーヴェンの交響曲集での、精妙さと、忘我的熱狂にあふれた演奏も――。


 OEKと石川県立音楽堂とは、わが国におけるオーケストラとホールの幸せな関係の代表例と言うことができよう。つい最近、2025年10月に聴いた川瀬賢太郎さんの指揮によるモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」にも、私は心底から驚嘆したものだ。弦の爽やかさ、管のしなやかさ。内声部の交錯がはっきりと浮かび上がるその見事さ。このホールで聴くOEKの音は、実に高貴な美しさに満ちていた。

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