和洋の響Ⅵ〜能舞とオーケストラ
音楽堂では、これまでオーケストラ・アンサンブル金沢(以下、OEK)によって「和」と「洋」の数々のコラボレーション作品が上演されてきたが、「和洋の響」は和楽器が用いられ能舞と合わせることが可能な作品を公募し、さらには能舞とバレエが合わさる斬新かつ意欲的な公演。60年代から武満徹らと能舞とのコラボレーションを実践し、OEKでも積極的に新作を委嘱してきた“現代音楽の初演魔”岩城宏之初代音楽監督の遺志を受け継ぐ重要な場でもある。今回はどんな舞台になるか―まずは作曲された作品がいかなる意図で創られたか、そして他に類を見ない本企画の見どころをお届けしよう。
- TEXT / 村上 湛(音楽堂邦楽主幹、明星大学教授)
私が「能舞監修」を担当するようになってから、今回が4度目の本企画となります。本年度の新作入選曲である鷹羽咲さん作曲〈桃花の翳の花筏Ⅱ 尺八とオーケストラのための〉を、能の技法を生かした舞踊表現を伴って舞台化するにあたり、喜多流シテ方・友枝雄人さんの能舞と、新国立劇場バレエ元プリンシパル・山本隆之さんのダンスによる意欲的構成を試みます。
「還暦を過ぎてようやく一人前」とされる能と、パリ・オペラ座バレエ団のダンサー定年が42歳と決められているクラッシック・バレエとでは、演者に求められる身体性のありようがまったく異なります。この「違い」を楽しみながら、鷹羽さんのすばらしい音楽をどう生かすか。友枝さんと山本さんと、お二人の対話を重ねて、特色ある振付と演出を模索しつつあるところです。

舞踊手お二人の横顔をご紹介しましょう。
友枝雄人さんのおじいさまは近来の名人として今も信奉者の多い故・友枝喜久夫。おじさまは当代一の名手として絶大な人気を誇る人間国宝・友枝昭世さん。雄人さんはその後継者に当たります。能ではともするとありがちな狭い世界に閉じ籠もることなく、常に開かれた対観客意識を持つ意欲的な能楽師であると私は思っています。
山本隆之さんは新国立劇場バレエ団が1997年に創設されて以来はじめて、かつ、当初ただ一人のプリンシパル(最高位舞踊手)の地位にあって多くの役を主演し、「ダンス・ノーブル」(白いタイツを穿く王子役を代表とする気品あるダンサー)の魅力で一世を風靡しました。その麗しい舞台の数々は、同団を引退された今でも、私の眼にはっきり残っています。
お二人はもちろん今回が初の共演です。例年と違う金沢歌劇座のステージを使い、果たしてどのような表現が見られるか。鷹羽咲さんの新曲発表と合わせて、私も今から当日が楽しみでなりません。
