石川県立音楽堂
オーケストラアンサンブル金沢

受け継がれる岩城イズム 沖澤のどか・篇

指揮者としての原点を記したオーケストラ・アンサンブル金沢について語る

2025年3月にオーケストラ・アンサンブル金沢の金沢、東京、浜松公演も指揮した沖澤のどか。現在はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でキリル・ペトレンコのアシスタントを担当しながら、2023年からは京都市交響楽団の第14代常任指揮者に就任。またセイジ・オザワ松本フェスティバルの首席客演指揮者としても活躍している。彼女は2011〜12年にオーケストラ・アンサンブル金沢の指揮研究員として金沢で過ごした経験があった。その時の想い出を含めて、このオーケストラに生き続ける個性について伺った。

  • TEXT / 片桐卓也(音楽ジャーナリスト)

 オーケストラ・アンサンブル金沢の指揮研究員だったのは、ちょうど東京藝術大学を卒業して、その大学院に入るのが決まっていた時でした。それで大学院に入るのをいったん待って、金沢にアパートを借りて暮らすようになりました。近江市場からちょっと先に行ったあたりのアパートで、そこから自転車で石川県立音楽堂まで通っていました。1年半ぐらいの期間だと思います。午後から出勤の日は、近江市場で何かを食べてから行ったり、また、金沢にいる間に、それぞれの季節の旬の食べ物は全部食べようと思っていたので、5キロぐらい太りました。ただ、生活はギリギリだったので、楽団員のみなさんがいろいろと気にかけてくれて、一緒に飲みに行ったりすることもよくありました。私は青森出身ですが、金沢のお酒は東北のお酒とは違っていましたし、魚も日本海産の味があり、その組み合わせがとても素晴らしいと思いました。

 その時期はちょうど井上道義さんが音楽監督で、また山田和樹さんがミュージックパートナーであった時代です。オーケストラの演奏を聴いて感じたのは、とても洗練された音色を持つオーケストラだということでした。そして指揮者まかせにするのではなく、オーケストラのメンバーが自主的にフレージングを考えたり、リハーサル中でもメンバー同士が話し合ったりすることもある、とても個性的なオーケストラだと思いました。井上さんはオーケストラのセッティングを変更したりして、大きなオーケストラでは大変だと思うようなことも、小さなサイズのこのオーケストラでは出来るのだなと感じました。リハーサルのコミュニケーションも英語でしていたので、日本語でするリハーサルとはやはり違う雰囲気が出ていて、それがこのオーケストラのユニークさの一部になっていると感じていました。

 でも、指揮研究員は実際に振る機会はないので、それをちょっと山田さんに愚痴ったら、プロコフィエフの「古典交響曲」をリハーサルの時に振らせて下さいました。また、子供たち向けのコンサートだったのかもしれませんが、井上さんが「運命」のことを話していたら、舞台袖に居た私を見つけて、急に「振ってみて」と言われたことも良い思い出ですね。

 オーケストラは現在、世界的に均一化していると言われますが、OEKはとても個性が生きているオーケストラだと思います。私が居た時代とは管楽器のメンバーがかなり替わったはずですが、それでもOEKとしての音は変わっていないと思います。それはホールに変わらず残っている響きというものもあると思いますし、その土地の空気感が残っているとも言えると思います。そうしたオーケストラの個性を持ち続けているということが大切だと思います。

 山田和樹さんと出会ったのも金沢が初めてでした。ちょうどブザンソン国際指揮者コンクールで優勝された後だったので、かなりお忙しい時期だったと思いますが、アマチュアのオーケストラを紹介して頂いたり、一緒に演奏会で指揮をさせて頂いたり、また、日本でのマネージメントを探す時にもとても親身に手伝って下さったり、いろいろとお世話になりました。

 井上道義さんとは独特の距離感がありましたが、一緒に生牡蠣を食べに行ったりしたこともあります。指揮者と副指揮者が一緒に牡蠣を食べてはいけないと、後で思いましたが。井上さんは引退されましたけれど、本当に残念です。あの動きからしか生まれない音楽があったと思いますし、それがオーケストラ・アンサンブル金沢の個性としても残っていると思います。

 また、岩城宏之先生の個性も息づいています。昨年メルボルン交響楽団へ客演した時に、岩城先生の時代にも団員だった方に会って、当時のお話を伺いました。オーケストラ・アンサンブル金沢が発足した時にもメルボルンから何人かの演奏家が参加されたと思うのですが、このオーケストラを通して、そうしたご縁がたくさん生まれたと感じています。そういう点で、インターナショナルな接点を持つオーケストラなのだと思います。

SHARE
TICKET
オンラインでのご購入

会員登録すれば24時間いつでも
チケットが購入できます。

窓口でのご購入

石川県立音楽堂チケットボックス
(石川県立音楽堂1F)

【窓口】9:00〜19:00 【電話】10:00〜18:00