石川県立音楽堂
オーケストラアンサンブル金沢

井上道義とOEKの足跡を振り返る

岩城宏之の後を受け継いで2007年1月から2018年3月までオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の第二代音楽監督を務め、現在は桂冠指揮者である井上道義。今年末の指揮者引退を控え、10月の全国共同制作オペラ「ラ・ボエーム」と11月の第487回定期がOEKとの最後の公演となる。そこで数々のOEKとの名場面を写真で振り返り、両者のパートナーシップを総括したい。

  • TEXT / 潮博恵(音楽ジャーナリスト)

 井上がOEKと石川の聴衆にもたらした最大の恩恵は、企画ものや様々なコラボレーションによる公演を通して得られた刺激的で面白い体験の数々だ。音楽堂入口の柱に掲げられた井上の顔写真と「何をやっているのかな?音楽Do」というキャッチコピーはまさにこの姿勢の象徴だった。彼が他ジャンルとのコラボレーションの際はもちろん、正統的なオーケストラ公演においても、毎回聴衆の予想を超えた演奏や企画を繰り広げて楽しませることができたのは、自らの最大の強みである、その唯一無二のパーソナリティを大事に守り、貫き通したからこそ実現できた成果なのだろう。

A:音楽監督時代、音楽堂の入口に掲げられたキャッチコピー
B:音楽監督就任記念公演「雅楽聲明との出会い」(2007年2月)
C:東日本大震災直後、当時高校生だった郷古廉と共演(2011年3月)
D:ヘンデル・ガラコンサート公演「神々しき調べ」より(2011年9月)
E:仙台フィルハーモニー管弦楽団を迎えて「大震災からの復興支援コンサート」(2011年4月)
F:金沢能楽会と共に世界初演された、高橋裕「能とオーケストラのための《井筒》」より(2008年10月)
G:ドビュッシー「おもちゃ箱」より(2008年3月)
H:井上が当時飼っていたアヒル、まひろくんが登場したプロコフィエフ《ピーターと狼》(2012年3月)

 井上時代を象徴するものとしてはもう一つ、ゴールデンウイークの音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ金沢」を開始し、現在の「ガルガンチュア音楽祭」へと続くきっかけをつくった功績が大きい。音楽祭を開催することで、音楽堂のネットワークが幅広い層の聴衆や地元の音楽愛好者に広がった。

I:2008年5月に開催された「ラ・フォル・ジュルネ金沢」
J:2010年に開催された第2回指揮者講習会。共に指導あたった広上淳一や当時講習生だった沖澤のどかの姿も。
K:21世紀美術館にて井上&OEKが15のチームに分かれ各展示室で演奏した「建築と音のアンサンブル」。井上は「作曲中」と題された《アート》に(2010年9月)

 音楽監督を退任してから6年が経った今振り返ってみると、井上は岩城がOEKでつくり上げたものに対して敬意を持って受け継ぎながら、井上カラーを打ち出していたということがよくわかる。渦中にいたときは引っ掻き回されててんやわんやという場面も少なくはなかったものの、実はとても理想的な二代目音楽監督だったのだ。

L:チッコリーニと共演したラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ・フェスティバル(2011年8月)
M:岩城からコンポーザー・イン・レジデンスを引き継ぎ、故一柳慧の委嘱作品を世界初演(2008年1月)

 OEKと石川の聴衆に音楽を通してたくさんの刺激をもたらし、私たちの目や耳を大いに開眼させてくれた井上マエストロ。あらためて心からの感謝を捧げたい。

N:プッチーニ《トゥーランドット》より(2009年7月)
O:野田秀樹とのタッグにより上演された《フィガロの結婚》(2015年5月)
11/9
[土]
14:00開演開演(13:00開場)
コンサートホール
第487回定期公演マイスター・シリーズ
終の境地。道義が極めたショスタコーヴィチ。

指揮:井上道義(OEK桂冠指揮者)
ソプラノ:ナデージダ・パヴロヴァ
バス:アレクセイ・ティホミーロフ

西村朗/鳥のヘテロフォニー(1993年度OEK委嘱作品)
ショスタコーヴィチ/交響曲 第14番 作品135

【全席指定】SS席 7,000円/S席 6,000円/A席 5,000円/ビスタ席 3,000円/スターライト席 1,500円/車椅子席 6,000円
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