ステージアートの世界 Vol.2
~石川・香港 共同制作事業~
今回の「ステージアートの世界」は主に舞台美術と音楽が主役。「12個の香水瓶が展示され、その香水瓶一つ一つに物語を載せてミニシアターのような世界を音楽と共に楽しむ」という企画なのだが、果たしてどんな「世界」なのか―創造は膨らむものの、いかんせん謎が多すぎる。今回のステージの魅力を一つひとつ紐解いていこう。
さて、なぜ香水がモチーフなのか。これはこのプロジェクトのプロデュースを手掛ける
レオン・コー自身が香水のコレクターであることがはじまり。なんと2000本もの香水瓶を持っているのだとか。展示は12の香水瓶の置かれたディスプレイに分かれており、そこでは映像や演劇、音楽、
香りまで組み合わされ、人類の歴史が語られていくという。この紙面で紹介している写真はひとつの舞台で転換していくわけではなく、博物館や美術館の展示会のような感覚で作品を楽しんでいく趣向だ。
自らの作品で最初に香水をモチーフに使用したのは13年前だそうだが、時を超えて新たなプロジェクトとして生まれ変わった。というのも、今回は国内外で数々のオペラや演劇の舞台を手掛けてきた松生紘子が舞台美術を担当。まさに香港と日本を代表する芸術家の競演といえる。演奏はオーケストラ・アンサンブル金沢のトロイ・グーギンズをはじめとする弦楽四重奏とオーボエ奏者、ピアニストによる編成。展示だけを見ることも可能だが、生演奏はレオン・コーが作曲した楽曲の演奏が空間のあちこちに映し出される映像とシンクロし、観客は多角的な感覚から展覧会を楽しむことができるという仕掛けだという。これはぜひ3日間中4回行われる生演奏を楽しんでほしい。
今回のプロジェクトをプロデュースするのはレオン・コー。彼は香港国内外で活躍する作曲家であり、演劇プロデューサーとしての顔をも持つ若き逸材である。香港シンフォニエッタとのコラボレーション、広東語によるオリジナルのオペラを作曲するなど彼の多才な経歴を調べるだけでも枚挙に暇がない。そんな彼が日本で初めて自らの芸術性を示す場所として選ばれたのは東京でも大阪でもない、石川県立音楽堂なのである。
香港と日本の共同事業ということで、まずは10月香港で行われるパフォーミング・アート・エキスポで開催、その後12月に同じプロダクションが音楽堂の交流ホールで開催される。交流ホールという舞台と客席が固定していない自由な空間だからこそ成しうる「ステージアートの世界」をぜひ目撃してほしい。
Interview
松生紘子(舞台美術) Hiroko Matsuo
レオン・コーさんとの仕事は今回が初めてでしょうか
今回のプロジェクトで初めてお目にかかりました。笑顔が素敵な穏やかな方です。
国際的な感覚をお持ちの、心の広い方だと思います。
映像や演劇、音楽、香りまで組み合わされた多角的な仕掛けがあるそうですが。
私は今回主に香水瓶を展示している12個のディスプレイをデザインしているのですが、
ウィンドウディスプレイ的なデザインは今までやったことがありませんでした。
でも、レオンさんはそれを「演劇的感覚を持ったデザイナーに担当してほしい」という
希望を持っていらっしゃったようですので、私は特に意識せず、いつも自分が舞台の
デザインをしているのと同じような気持ちでプランをしていきました。
我々チームは、その1つ1つのディスプレイのことを「ミニシアター(小さい劇場)」と呼んでいます。
それを表現するうえでどんな工夫をされたのでしょうか
それぞれのミニシアターには明確なテーマがありますので、それらを最大限効果的に
見せられるように、構図や色を工夫しています。香水瓶が俳優だと思って、どうやったら
一番その場面にふさわしい見え方になるか、照明の当たり方まで想像して作業しました。
EXHIBITION & CONCERT
ステージアートの世界Vol.2~石川・香港 共同制作事業~
○演出・構成・作曲:Leon Ko
○ヴァイオリン:
トロイ・グーギンズ(OEK楽団員) ほか
○美術:松生紘子
EXHIBITION & CONCERT
ステージアートの世界Vol.2~石川・香港 共同制作事業~
○演出・構成・作曲:Leon Ko
○ヴァイオリン:
トロイ・グーギンズ(OEK楽団員) ほか
○美術:松生紘子
EXHIBITION & CONCERT
ステージアートの世界Vol.2~石川・香港 共同制作事業~
○演出・構成・作曲:Leon Ko
○ヴァイオリン:
トロイ・グーギンズ(OEK楽団員) ほか
○美術:松生紘子

PROFILE
松生紘子(まつお・ひろこ)
大阪芸術大学卒業後、劇団四季在籍中に日生名作劇場など5作品の装置をデザインする。
舞台美術家・土屋茂昭氏に師事。2009年渡英。
Royal Central School of Speechand Dramaにて空間デザインの修士課程を修め、
2014年までロンドンを拠点に活動。
Antony McDonaldやSimon Holdsworthのアシスタントデザイナーを、
グラインドボーンフェスティバル、ウェルシュナショナルオペラ、
オランダ・ナショナル・レイズオペラなどで務める。
「Dance with Devils」(三浦香演出)にて第44回伊藤熹朔賞奨励賞、
「舞台 少女ヨルハ Ver1.1a」(松多壱岱演出)にて第1回伊藤熹朔記念賞本賞受賞。
帰国後の主な参加作品は「魔弾の射手」(菅尾友演出)、
「蝶々夫人」「源氏物語」(岩田達宗演出)、「ランメルモールのルチア」(田尾下哲演出)、など。