岩城宏之メモリアル・コンサート特集
2024年度 岩城宏之音楽賞受賞者
竹田理琴乃さん 特別インタビュー
―岩城宏之音楽賞受賞の知らせを聞いて
竹田 石川県で生まれ育った私にとって、岩城マエストロの名を冠した音楽賞は特別な存在です。思ってもみない素晴らしい賞を受けることができ、とびきりうれしく光栄に思います。家族や恩師、応援してくださっている周囲の皆さまに深く感謝しています。
―OEKとは共演を重ねています
竹田 幼いころからOEKのコンサートを聴いて育ちました。音楽にあふれる金沢で、素晴らしい演奏に触れてこられたのはとても幸運でした。OEKの皆さまとは7歳で初共演して以来、ご一緒させていただく機会に恵まれ、そのたびに気づきや学びがあり、刺激をいただいています。
―記念の演奏会ではリストのピアノ協奏曲第2番を演奏されます。
竹田 リストが長年にわたり手直しを重ねた第2番は「交響的協奏曲」と名付けられた時期もあり、
ピアノとオーケストラが一体となった交響詩のような側面があります。私もオーケストラの一員となり、心を一つにして奏でることに憧れがあります。物語を読み進めていくようなドラマチックな曲の展開も魅力的です。OEKの皆さまとご一緒できるのがうれしく、楽しみです。
―故郷に寄せる思いと、メッセージをお願いします。
竹田 石川の街や人が大好きで、金沢に戻ってきました。音楽は心の栄養になると信じ、聴かれた方が、また明日も頑張ろうと思っていただけるような、誰かの心に寄り添える演奏家でありたいと思っています。今回、石川の音楽の「聖地」である音楽堂で、岩城マエストロの魂が受け継がれたOEKと、
沼尻竜典マエストロとご一緒できるコンサートは、ピアノを続けてきたことへの「ご褒美」のような時間です。思い切って楽しみたいと思います。
ぜひ、聴きに来てください。
【寄稿】薮田翔一 「線」の集積で生み出す音世界

─三木露風の詩に歌曲、オペラ《女王卑弥呼》…多彩な顔
藤盛一朗(MOSTLY CLASSIC 編集長)
オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のコンポーザー・オブ・ザイヤー、薮田翔一。OEKの委嘱新作がきょう演奏される薮田には、「赤とんぼ」の詩人として知られる三木露風の歌曲を次々生み出し、オペラ《女王卑弥呼》の作曲にも取り組む多彩な顔がある。
2015年、ジュネーブ国際コンクールで優勝し、一躍その才能が注目された。世界初演となる今回の《Accumulate for Orchestra》(アキュムレイト・フォー・オーケストラ)は「集積」を意味し、抽象音楽のど真ん中をいく作品。「書道で字をはらうと、線が生まれます。そうした『線』の(音の)集積がこの作品。コンクールの弦楽四重奏の受賞作《Billow》は、波のようでした。今回は大軍が押し寄せてくるようなイメージが生まれます」
曲は15分弱。2管編成のオーケストラ+トロンボーン、チューバで、「OEKは組織力と一体感が素晴らしい」と言い、OEKに宛て書きした作品となっている。
出身は、兵庫県たつの市。「コンクールの後、分かりやすい作品も書きたいと思いました」。同郷の露風に注目し、「一つ星」などその詩に曲をつけてきた。すでに50曲にもなる。
そしてオペラ好きで知られる漫画家、池田理代子に委嘱され、2025年6月の初演に向けて取り組んでいるのが《女王卑弥呼》。「メロディアスなオペラ作品です。抽象作品と(これらの創作は)対となっている」という。
新作の指揮は、沼尻竜典。オペラ《竹取物語》の作者としての顔も持ち、スコアの読みの深さには定評がある。そして、聴き手の私たちには、初演に立ち合う一回限りの幸福と名誉が与えられている。
○指揮:沼尻竜典
○ピアノ:竹田理琴乃(2024年度岩城宏之音楽賞受賞者)
薮田翔一/Accumulate for Orchestra
(2024オーケストラ・アンサンブル金沢委嘱作品・世界初演)
リスト/ピアノ協奏曲 第2番
メンデルスゾーン/交響曲 第4番「イタリア」
V席 ¥3,000/スターライト席 ¥1,000
*OEK定期会員:S・A席 ¥1,500割引
*25歳以下の方50%割引(前日予約可/空席ある場合に限る/要証明書類)

PROFILE
竹田理琴乃(たけだ りこの)
金沢市出身。高校卒業後、ポーランド国立ショパン音楽大学を首席で卒業、
京都市立芸術大学大学院音楽研究科修士課程を首席で修了、大学院市長賞を受ける。
第7回北陸新人登竜門コンサートで優秀者に選ばれ、井上道義氏指揮のOEKと共演。
ショパン国際ピアノコンクール本大会に、二度にわたって出場した。
現在、地元金沢を拠点に、いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭、
ショパン・フェスティバル㏌表参道など幅広く活躍中。