ステージアートの世界Vol.1
〜身体表現の可能性〜 BALLET with 金子三勇士
ピアノとバレエ、そしてリート。芸術が拮抗する1日限りのステージ…
当音楽堂でおなじみのピアニスト・金子三勇士さんの魅力を伝える企画として、
たいへん贅沢な催し〈Ballet with 金子三勇士〉が実現しました。
クラッシック・バレエ、および、声楽との競演です。
★多彩な共演者
今回は東京・新国立劇場バレエ団ゆかりのお三方をお招きしました。
元プリンシパル(最高位ダンサー)・本島美和さんは、2022年に退団後は同劇場バレエ研修所の所長補佐・主任講師の重職にあって、後進の指導に砕身しておられます。先ごろ大盛況のうちに演了した〈アラジン〉の2008年世界初演された時、女性主役・プリンセスを踊ったのは本島さんでした。繊細な中に強い芯の徹った、大輪の薔薇のような芸風は今もなお輝かしく健在です。
その〈アラジン〉で完璧な主役ぶりを見せ、プリンシパルとして活躍中の奥村康祐さんは、前作〈ラ・バヤデール〉「黄金の神像」役では驚異の身体技に基づく神力の威厳を示し、観客を圧倒しました。繊細かつ深々とした「心の表現」において、奥村さんは常に絶妙のものを見せてくれます。
ファースト・アーティストの中島瑞生さんはこの7月、同劇場初演作品〈人魚姫〉の初主役を射止めました。長身を活かしたダンス・ノーブル(主演女性ダンサーの相手を勤める王子役)として、正統派の揺るがぬ品位が今後ますます期待されます。
二期会に所属する声楽家・城宏憲さんは、大作オペラの主役を次々に任される人気テノールです。近年、〈メデア〉ジャゾーネ、〈ノルマ〉ポッリオーネといった、イタリア・オペラ系列では最重量級の大役を美事に勤めました。精緻な表現に長けた個性を生かし、今回はドイツ歌曲の名作に挑みます。

★多彩な演目
1911年に伝説の名手・ニジンスキーが初演した〈薔薇の精〉は、ウェーバー〈舞踏へ勧誘〉のバレエ
版です。舞踏会の興奮さめやらぬ少女の夢に出現した、華麗な薔薇の精……今回は、中島瑞生さんの薔薇の精。本島美和さんの少女。原曲のピアノ独奏版で上演します。
サン=サーンスの〈白鳥〉を舞踊化した〈瀕死の白鳥〉は1905年、これまた伝説の名手、アンナ・パブロワが初演した名作です。彼女は1922年に日本でもこれを踊り、当時の文化人たちに強烈な印象を残しました。最高格の品位と技術を持つ女性ダンサーでないと作品の真味は示せません。本島美和さんは、まさに最適役です。
1840年に作曲されたシューマンの歌曲集〈詩人の恋〉は、男声用ドイツ歌曲として最高のレパートリーです。恋を失った若者の傷心を精緻に歌い上げる青春の音楽。歌のみならずピアノにも作曲の技法の粋が尽くされます。初の振付を担当する奥村康祐さん自身が踊ります。
★演者にとってすべてが初演
ここに触れた各曲みな、金子さんほか出演者全員にとって本日が初挑戦です。特に舞踊〈詩人の恋〉は、今回の制作版が世界初演となります。
現代日本で望み得る最高レベルのパフォーマンスが、交流ホールの極小空間で至近に味わえる稀有な機会。大いにご期待下さい。
~身体表現の可能性~
BALLET with 金子三勇士
○ピアノ:金子三勇士(全曲)
〈薔薇の精〉
(ウェーバー〈舞踏への勧誘〉)
○薔薇の精:中島瑞生
○少女:本島美和
〈詩人の恋〉
(作詞:ハイネ/作曲:シューマン/振付:奥村康祐)
○詩人:奥村康祐
○テノール:城宏憲
《休憩》
シューマン=リスト:献呈
シューマン〈トロイメライ〉
ドビュッシー〈月の光〉
ショパン:ハラード第1番
〈瀕死の白鳥〉(サン=サーンス〈白鳥〉)
○白鳥:本島美和
○チェロ:植木昭雄(OEK)