石川県立音楽堂
オーケストラアンサンブル金沢

ファンタスティック・オーケストラコンサート Vol.3

グルダとストラヴィンスキー クラシックの枠から出た”ボーダレス”な組合せの妙を楽しむ
  • TEXT / 戸部亮(音楽評論家)

 本公演、一見すると聴きどころは今を時めく角野隼斗が登場すること。確かにそうだ。しかしそれ以外でもこの公演は聴きどころがたっぷりある。

 まずプログラミングが秀逸だ。ストラヴィンスキー「兵士の物語」、グルダ「コンチェルト・フォー・マイセルフ」で構成する他では見かけない構成。もはや録音でしか確認できないが、グルダのピアノは強靭なタッチ、立体的な脈動、それらをベースに曲のフレージングを血肉化させ伸縮自在に歌わせていく。驚くべき鬼才感。これがグルダが伝統に革新的な息吹を与え、グルダをグルダ足り得るものにしていた。だからこそかもしれないが、彼の心のうちに宿っていた音楽のデーモンが湧き上がって、彼をジャズや作曲の世界に誘っていったのだろう。

 2024年2月に井上道義との公演でもグルダ作品——「チェロ協奏曲」——を取り上げたが、それをトレースするかのように「コンチェルト・フォー・マイセルフ」がプログラミングされた。この作品はグルダの洒落っ気があふれ、軽やかさが何とも言えぬワクワク感をもよおさせる。いいジャズ演奏を評する例としてインプロビゼーションあふれる演奏という言い方がある。まさにグルダの作品はそれであり、聴いているとクスっと笑ってしまうシーンや、面白さが目くるめく展開されていく。しかも変に押しつけがましさがないのが本当に心地よい。これが第一の聴きどころ。

もう一つの楽しみは「兵士の物語」。民族音楽、ジャズなど伝統音楽とストラヴィンスキーとしての新しい音楽の発見が併せ持って創作された同曲。それ自体でも楽しいが、語りとして桂米團治が登場するのも見ものだ。桂米團治は過去にも「兵士の物語」の語りを経験しているが、彼自身がクラシック音楽に造詣深いので、きちんと間を意識して舞台を進めてくれる。本公演の聴きどころは実は表面的なところ以上にたっぷりある。

5/15
[木]
19:00開演開演(18:00開場)
コンサートホール
ファンタスティック・オーケストラコンサート Vol.3

◯指揮:川瀬賢太郎
◯語り:桂米團治
◯ピアノ:角野隼斗
◯ドラム:石若駿
◯ベース:マーティ・ホロベック

ストラヴィンスキー/兵士の物語
グルダ/コンチェルト・フォー・マイセルフ

【全席指定】※予定枚数終了
SS席 8,500円/S席 7,500円/A席 6,500円/ビスタ席 4,500円/車椅子席 7,500円
・25歳以下公演前日より半額で予約可
・託児サービス
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