石川県立音楽堂
オーケストラアンサンブル金沢

音楽堂パイプオルガン ここだけの話①

カール・シュッケ社 整音師 ロベルト・マティージアック氏

今回のオーバーホールは開館時のオルガン設置にも携わったカール・シュッケ社の整音師・ロベルトさんが再来日。作業の合間を縫って話を伺うことができました。オーバーホールという作業、整音師という仕事、開館当時のエピソードなど興味深いお話ばかり――ぜひこの機会にオルガンに携わる技術者の仕事に触れてみてください。

――25年ぶりの金沢ですね。

 当時は新幹線の高架もなく、音楽堂の周り一面が工事現場でしたね。岩城宏之さんが時折オルガンを見に来られて、少し言葉を交わしたこともありました。3か月滞在し、開館1か月前にはオルガンの設置が終わって帰国したのです。それから25年の時が経ちましたが、街の風景は変わってもこのホール自体は綺麗なままですね。

――当時の音楽堂芸術総監督である岩城宏之さんから「オルガンに特殊な機能をつけてほしい」というリクエストがあったそうですが。

 オルガンのモーターの出力を調整して、風圧をわざと下げる機能のことですね。現代音楽において使われます。風圧を極限まで下げると、パイプが正常に振動しなくなり、音にならないくらいのため息――ノイズのような音だけが出るというものです。この効果を綺麗に出すためには、オルガンのすべてのパイプの音が完璧に整えられていないといけません。バラつきが出てしまいますからね。

ロベルト・マティージアック氏(左)

――今回のオーバーホールはどのような流れで行われたのでしょうか。

まずオルガンの状態をみて何をすべきか事前の計画を立てます。カール・シュッケ社からは最初2名のスタッフが8週間かけて掃除に専念し、その後に私たちが来て彼らの仕事を引き継ぎながらチューニングをして響きの調整に入りましが、20週間でどうにか完結させます。パイプオルガンとはそれだけ大きくて精密な楽器なのです。

――より傷みの激しい箇所などはありましたか?

ヨーロッパの教会にあるオルガンだと暖房費が高いため冬でも暖房を入れず、結露が発生するためにカビの発生が大きな問題となります。日本ではホールの空調管理が非常にしっかりしているので、カビの心配はほとんどありません。

一方で、日本では気候のせいなのかオルガンに風を送り込む「ふいご」に使われているレザーの劣化がヨーロッパよりも早いです。ヨーロッパなら50〜80年持ちますが、アジアでは紙のようにボロボロになってしまうことがあります。金沢でも4つのふいごの革を新しくしました。

空輸で届いたパイプを音楽堂へ運び入れている様子

――オルガンを「整音」するとは具体的にどのような作業をするのでしょうか。

 ピアノの調律師は張られた弦をハンマーで調整して音を整えますが、オルガンはパイプの長さを伸ばしたり短くしたりします。オイルサーディンの缶を空けると蓋がロールのように丸まるでしょう?金管のパイプの後ろにはそのようなパーツがあるので、大きいパイプなら自分の体重をもってパイプを下げたり、小さいパイプなら注意深くハンマーで叩いて微調整し、音程を合わせます。木製のパイプには蓋がついていて、それを突っ込んだり引っこ抜いたりして調整します。どちらのパイプも調整は撫でる程度。ミリメートルなんて単位じゃない、非常に繊細な力加減で行います。

さらにリードパイプもあり、これは金属の「リード」が風で振動して音が出る仕組みです。大きなものは30cm、小さなものは数ミリ、厚さは0.05mmという非常に精密なものです。このリードは短くすると音が高くなります。

金属のパイプはロール状、木製のパイプは蓋がついていて、それぞれのパーツを調整することで音程を合わせる。

――そうやって音程を合わせた後、響きの調整に入られるんですね。

 オルガンはそれぞれに特徴がありますが、その上でオルガニストから「もっと鋭い音に」「もっと柔らかく」「音を大きくして」といったリクエストには応じることができます。音色を微調整することも整音師の重要な仕事です。

オルガンの音には流行があります。1920〜30年代は澄んだ音、戦後は60〜70年代は非常に鋭い音が好まれました。現代はロマンティックな柔らかい音が好まれる傾向にあります。金沢のオルガンはそのロマンティックな音に近しいですね。

ヨーロッパではオルガニストが定年したりして交代するたびに、整音師が呼ばれて音の好みを反映させます。180度違う要望がでますし、音だけではなくストップの位置を変えてほしいなんて言われたりもしますよ。一本だけ変えるなんてできないからセットで変えます。

――今回の作業で、オルガンは2001年の開館当時の状態に戻ったということでしょうか。

 その通りです。また約25年後にオーバーホールを行うときも、同じように2001年のオリジナルに戻す作業を繰り返すことになります。

 良い状態を維持する秘訣はオルガンを常に動かし弾き続けること。オルガンは100年、200年は優にもつ頑丈な楽器ですが、高価な楽器だからといって使わずにしまっておくのが一番良くありません。ドイツには「Wer rastet, der rostet.(休むものは錆びる)」という格言があるんですよ。ぜひこのオルガンの素晴らしい音を楽しんでください。

6/22
[月]
12:15開演開演(11:30開場)
コンサートホール
音楽堂ランチタイムコンサート
ソプラノとテノール 魅惑のデュオ

ソプラノ:津野 里絵子
テノール:松岡 大海
ピアノ:白澤 あまね
オルガン:黒瀬恵

全席自由
一律:500円
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