音楽堂パイプオルガン ここだけの話②
――黒瀬さんは月2回ほどメンテナンスをしてくださってますよね。
具体的には弾きこんでるんですね。弾いて空気をパイプに流さないと音が狂いやすくなるのです。あとは公演当日いきなり不具合が見つかったら大変なので、定期的に弾いて状態を確認するためです。そして、弾くたびに気になる箇所をメモしておくとヤマハが年に2回保守点検で音楽堂に来るとき、それを頼りに調整してくれます。
――弾かないとだめになるというのは本当なんですね。
コロナのとき演奏会がなくなりましたよね。オルガンの演奏動画を撮るために久しぶりに電源を入れたら、ふいごがパーン!って破裂したんですよ。空気漏れの音が聞こえてきて、オルガンを弾くどころじゃなくなったことがありました。
――定期的に弾いていてよかったな、と思ったことはありますか?
2年前の地震だけでなく、私は2007年の能登半島地震、2011年の東日本大震災のときもオルガンをチェックしているんですが、2007年の時は一度パイプの位置がズレてしまって、ヤマハに直してもらいました。11年の時は特に問題はなく、その後にパイプの足元の歪みが出てくるようになりました。
――今回の改修で全面管(客席側から見えるパイプ)はほとんど交換されましたよね。
それによって地震や経年劣化による歪みは解消されますが、パイプが変わることは厚みや素材が変わってしまうので、音も変わる可能性があったわけです。でも実際聞いて、本当に開館当時の音に戻っていると感じました。あれはすごいこと!整音師の腕ですね。
――あらためてオーバーホールを終えたオルガンの音はいかがですか。
25年前、音楽堂の建設中に弾かせてもらったときの響きを思い出しました。真っ直ぐスーッて…明瞭さが一番に来るって感じ。川だって小石があったらガタガタになるように、埃で空気の通り道が塞がれていたからでしょうね。
――今回の改修で整音師の方に要望を出されたと伺いました。
音楽堂のオルガンは岩城宏之さんの意向を受けて「オーケストラと合わせるためのオルガン」でにあるんですね。ただ、合わせる時にちょっとオルガンの音が小さくて指揮者の要求に応えきれない時があったから、整音でバランスを整えてもらいました。だからいまとてもバランスがいいんですよ。
岩城さんがつけられた風圧を変える機能も含めて、このオルガンは岩城さんが金沢に遺された財産のひとつです。この機能は演奏会で一度も使われてないですが、そんな作品が生まれればいいですね。そして、このオルガンを見守る次世代も見つけられたら――と思います。
ソプラノとテノール 魅惑のデュオ
ソプラノ:津野 里絵子
テノール:松岡 大海
ピアノ:白澤 あまね
オルガン:黒瀬恵
一律:500円
