石川県立音楽堂
オーケストラアンサンブル金沢

石川県立音楽堂開館25周年スペシャルコンサート
「森のうた」の聴きどころ

  • TEXT / 寺西肇(音楽ジャーナリスト)

 かつて若き音楽学生たちが紡いだ、瑞々しい響きのこだまが、きっと聞こえて来るだろう。今年は、石川県立音楽堂の開館から25周年にして、OEK初代音楽監督の岩城宏之の没後20年。これを記念し、岩城の指揮人生の“原点”ともなったショスタコーヴィチのオラトリオ《森のうた》を、やはり岩城から強い影響を受け、今や国際的に活躍する気鋭のマエストロ・山田和樹の指揮で上演する。演出と語りは、県立音楽堂芸術監督の野村萬斎が担当。節目の年を迎えた堂内に、喜びの調べが満ちる。

在りし日の岩城宏之と山本直純。《宿命》では野村萬斎が山本の亡霊となって現れる。

 1951年、東京藝大の学生だった岩城は、後に作曲家・指揮者として活躍することとなる一級下の山本直純と共に、ただ「棒が振りたい」との一念のもと、学生オーケストラを組織し、様々なトラブルを乗り越えて、遂には願いを実現。この時に取り組んだのが、この《森のうた》だった(このくだりは、同名の岩城の著書に詳しい)。共産主義イデオロギーを背景に書かれた作品だけに、その上演には賛否が分かれるが、岩城は「分かり易くて、巧く書いている。厳然として傑作だ」と、生涯にわたって愛し続けた。

 そして、今回、タクトを執る山田が、初めて指揮したプロのオーケストラはOEK。そのきっかけを与えたのが、他ならぬ岩城だった。巨匠からの「金沢で指揮して」との一言から本格的なキャリアをスタート、“岩城イズム”を受け継いだマエストロが、「75年前の岩城たちもかくや」という鮮烈なサウンドを聴かせる。そして、岩城の遺志を継ぐかのように、県立音楽堂を舞台に、東西を融合させた新たな芸術を追究し続ける野村萬斎。「森の緑が大地を救う」という作品の根源的なテーマに、どんな生命を授けてゆくのか、要注目だ。

 また、これに先立ち、山本の“変”曲によるベートーヴェン「交響曲第45番」が披露される。大学時代から天才ぶりを発揮し、「いずれは国際舞台にも…」と将来を嘱望された山本。しかし、あえて彼は日本国内に身を置き、大衆を対象に、テレビ・メディアなどを通じて、クラシック音楽の啓蒙に尽力した。その一環で冗談音楽も書いたが、当曲はその粋。「第45番」とは、これいかに? 実は、交響曲の「1番~9番」を全て足した数字だ。タイトル通り、9つの交響曲はもちろん、序曲やビアノ曲など、楽聖の手になる様々なフレーズが登場。そこに、関係のない旋律も次々に闖入して来る…抱腹絶倒の“迷作”をお楽しみあれ。

10/22
[木]
19:00開演開演(18:15開場)
コンサートホール
石川県立音楽堂開館25周年記念スペシャルコンサート「森のうた」

山田 和樹(指揮)
野村 萬斎(演出・出演)
宮里 直樹(テノール)
加藤 宏隆(バス)
東京混声合唱団、OEK合唱団
「森のうた」児童合唱団
ベートーヴェン/山本直純編曲 交響曲第45番「宿命」
ショスタコーヴィチ オラトリオ「森のうた」

【全席指定】S8,000円/A6,000円/B4,000円
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